いろどりの記憶書庫

読んだ本やお芝居の感想など♪

『水の柩』道尾秀介╎絶望しろと言うのでもなく、私たちを転ばすためでもなく

 

笑子さんの「とにかくぜんぶ忘れて、今日が一日目って気持ちでやり直すの」に励まされました。

 

それから印象に残ったのは、蓑虫の話。

ああ、私も他人を外面だけで判断してしまうなぁ、私も外に出てるところだけで評価されてるのかなぁ。それじゃあ私の中身はどうなんだろう。やっぱり黒い芋虫のようなものなのかな、みんなそうなのかな。

そうすると大したものじゃない気がするけど、多分これは絶望しろと言っているのではない。今はまだ上手く噛み砕けないけれど、敦子が言ったようにきっと意味がある。私たちを転ばすためではなく、「忘れる」「乗り越える」ための意味が。

 

敦子は、とても強い子だと思います。

 

一つ一つの静かな積み重ねが、ラストへ向かって行きます。

最後は眩いほどの輝きではないけれど、雨粒が生み出した金色の細かく優しい光に包まれています。

静かだけれど、登場人物たちの幸せを願いたくなるラストシーンです。