いろどりの記憶書庫

読んだ本やお芝居の感想など♪

『怪しい店』有栖川有栖╎「店」をテーマにした短編集

 

「店」をテーマにした短編集。

犯人側の視点で描かれた「ショーウィンドウを砕く」が好き。

「古物の魔」もなかなか良いミステリイしてました!

潮騒理髪店」はトンデモ推理だけれども火村先生の旅の様子が窺えたり、どことなくお洒落な短編映画っぽさが出ている。

火村先生の「人を殺したいと思ったことがある」の核心に少しずつ近付いている気がしてドキドキ!

『やがて海へと届く』彩瀬まる╎海辺の砂のような物語

 

失ったもの、失ったであろうものに見切りをつけるときに伴う痛み。

たとえばそれがすべて自己満足であったとしても……というのはとてもよくわかる。

辻村深月さんの『ツナグ』で「死者は残された生者のためにある」というくだりがあったのを今思い出した。

さらさらと掴んではこぼれ掴んではこぼれを繰り返し、そして辿り着くというまさに海辺の砂のような物語です。

国木田さん格好良いなぁ。

『罪の余白』芦沢央╎ぞくりとする「罰」の与え方

 

娘の死の真相を探るミステリーかと思いきや、転落に至る経緯は早々に明かされる。

そこにある悪意は酷いものだけれど登場人物はそこまで苛烈ではなく「どこにでもいそう」で、現実に在りそうな感じが恐ろしい。

複数視点の構成だが、物語の展開はストレート。「罰」の与え方にはぞくりとした。

 

ベタをネットで見てみた、すごいヒレがしっかりしてる!

 

「わからないのは、私だけじゃないのかもしれない」

わかったつもりでいて他人のことをわかりきることはできない、でもわかった気になる自分に気付いてハッとした。

『武道館』朝井リョウ╎ほんとうのこと、ほんとうのもの。

 

登場人物の発する声が凄く形になって表現されている。

ほんとうのこと、ほんとうのもの、見つけていきたい気持ちになりました。

愛子はわりに淡々としている印象だけれど、恋愛の描写は胸にズキュン。

NEXT YOUのメンバーは、どの子もみんな好きだなぁ……。

『プシュケの涙』柴村仁╎少しちぐはぐな印象

 

前半と後半で、ややちぐはぐな印象。もっと切なく叩き込めただろうに……惜しい。

由良にはもっと危うい鋭さ、吉野にはもっと儚さが切れ味として欲しかった。

『「やっぱり怖くて動けない」がなくなる本』石原加受子╎自分の自由を認めてあげよう

 

自分の自由を認められれば、他人の嫌な気持ちに対しても「それを思うのはあなたの自由」と許せるようになる、と。いつか穏やかにその境地に達したい。

自分の気持ちにばかり目を向けていても大切なものを大事にできない、でも自信がないともっと何もできないから、それを克服するために自分の気持ちに目を向けてみる。

『おしゃべりで世界が変わる』川上善郎

 

「人は〇〇のとき、おしゃべりせずにはいられないのです」のくだりに度々「いや、そうでもない」とツッコみ、私は根源的におしゃべりって好きじゃないのかなぁと思い悩む。

それは本書に書かれているように「おしゃべりを軽んじている」からではなく、おしゃべりを重要だと思っているからこそなのだけれど。

 

TwitterやLINEなど、掲示板とも異なる形のおしゃべり装置が広く流布した現在、特にメディアとインターネットのおしゃべりについての論は大きく変わるのだろう。

おしゃべりがつくり出してしまうモノ、おしゃべりのデメリットについてもより詳しく論じてほしかった。